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ニジェールの渡し -1- ある欠落 

「さあ、それでは10分後にラクダに乗り換えますから荷物を準備して下さい。」

ドゴンカントリーを後にした我々一行は、
悪路の中、更に四駆を飛ばし、
途中でのパンクや立ち往生も何とか乗り越え、
サハラ砂漠の入り口まで辿り着いたのであった。

やっとここまで来たか・・・

皆、心の中で思っていたに違いない。

             

照りつけるアフリカの太陽の元での移動は、
車の中に座っているだけでもかなり消耗する。

特に日差しの当たる側の座席の暑さは半端ではなく、
窓にタオルを貼り付け、
定期的に水で首筋を冷やし、
更に1時間おきに皆で席替えのローテーションを行いながら、
我々は何とか猛暑を凌いでいた。

今回、車は安全性と信頼性を最優先してトヨタにしたのであるが、
当然エアコンなどは着いていない。
土ぼこりの中を走行する場合などは、窓は完全に閉め切らなくてはならない。

ところがある時、
この車にはもっと大切な物が着いていない事が判明したのである。

             

この砂漠の入り口まで辿り着く途中に、
我々はニジェール川を渡る必要があった。
そこは定期的に小さなフェリーが通っており、
車も数台だけ乗せる事ができる。

小一時間ほど川の景色を眺めた後、
やってきた船に乗り込んだ我々は、
運転手のバラシキ(名前)が車を船に乗せるのを待っていた。

ところが何分経っても彼が乗船してくる気配がない。
私が気になって様子を見に行ってみると、
彼が桟橋で数人の現地の人達と何か言い争っているではないか。

船上に私の姿を見つけた彼は、
こっちへ来いと私を手招きしている。

何かまずい事が起こっているのでは・・・

ただならぬ気配の中、
争いの渦中に飛び込んで行った私であったが、
その後、事はとんでもない方向に展開するのである。

<つづく>
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ニジェールの渡し -2- 騒ぎの始まり 

桟橋での騒ぎは、
最初は数人の船会社の係員とバラシキとの間で起こっていた。

とりあえず駆けつけた私であったが、
彼らの話している言葉は当然わからない。

しばし様子を見ていると、問題はどうも、

「どちらの向きに車を載せるか」

という事のようである。

             

ご存知のようにフェリーは、
前後が対称の構造になっていて、
どちらの方向にも同じように進める場合が多い。

つまり方向転換せずに、スイッチバックのような形で、
二地点間を行ったり来たりできるのである。
ちなみに今回もそのような型の船であった。

そこでバラシキの主張は、

「車を前進で入れるから、前向きに下ろせるように船を進めてくれ。」

という事であるようだ。

ちなみにこのバラシキは、
今回の旅で我々のドライバーをずっと引き受けてくれたのであるが、
以前は長距離の大型トラックの運転手をしていたらしく、

「俺はアフリカ中をコンボイで転がしていたんだぜ、ふっふっふ」

と不適に笑う、
唯一気が短いのが難点な頼もしい男である。

更に、言葉は通じないのであるが、
私は彼に気に入られているようでもあった。

             

話は収拾がつかなくなり始めていた。

バラシキは何語かわからない言葉で私に同意を求め、
私も無責任に頷いたりしていたのであるが、
船会社の係員は 「バックで車を入れろ」 と、
頑として我々の主張に応じない。

他の乗客は既に乗船を済ませており、
これ以上騒ぎを大きくする事は得策ではなさそうである。

そして数十分の言い争いの後、ついにバラシキも折れ、
車の運転席にしぶしぶ戻ったまでは良かったのであるが、
次に彼の口からとんでもない事実が私に伝えられたのである。

<つづく>
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ニジェールの渡し -3- 突進せよ 

「前に回って車を押してくれ」

バラシキが(たぶん)そう言った。

「えっ」

「前に回って車を押してくれ」

「・・・」

             

前進してフェリーに車を載せる事を拒否された我々は、
急いで方向転換しバックで対応せざるを得なくなっていた。

既に出発の時間は過ぎており、
乗船していた人々も我々の騒ぎに気付いたのか、
桟橋はかなりの人だかりになっていた。

急いで駆けつけたガイド兼通訳のソリ(名前)が、
バラシキと何か言い争いをしている。

数分のやりとりの後、
彼はこちらにやってきて諦めたように言った。

「この車はバックできないらしい」

「・・・」

             

「バックできない」という事は、
「バックのギアが初めからついていない」のか、
それとも単に「ギアが故障している」のか。
この車はトヨタだったのでは。

様々な思いが私の心に去来した。
が、この期に及んでそのような事はどうでもよかった。

結局、桟橋の係員、乗客、我々の総勢約10名の男達は、
この目の前の「バックできないトヨタの大型四駆」を、
前方から皆で船に押し上げることになったのである。

桟橋とフェリーを繋いでいるのは、二本の木の板のみ。
その上、高さに差があるため、
事前にかなり勢いをつける必要がある。

             

男というのはつくづく不思議な生き物で、
最初は皆しぶしぶ「手伝ってやるか」という感じであったのが、
大勢の乗客が見守る中いざ開始という段階になると、
何か特別な使命を与えられた者たちのように、
がぜん張り切っているのである。

「そらーっ!」

口々にそれぞれの言語で叫びながら、
男達はフェリーに向かって車を押し始めた。
我々のトヨタは桟橋を後ろ向きに徐々に加速していった。

運転席では、バラシキが少し怒った顔をしてハンドルを握っている。

高揚した気分で額に血管を浮き立たせながらトヨタを押す多国籍軍約10名。

だが悲しいかな、
彼らは誰一人として、
その数秒後に二本の板にタイヤを乗せようとする直前に起こる、
とんでもない出来事を予想する事はできなかったのである。

<つづく>
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ニジェールの渡し -4- 再度突進せよ 

10人の男達に押されてトヨタは後ろ向きに加速していった。

この勢いだと、うまくタイヤを二本の板に乗せることができれば、
難なくフェリーに乗せられそうである。

もう少しだ・・・

皆の腕にも力が入った。
船上からは乗客のほとんどが我々に注目している。

             

ところが残り10mくらいになった時、私は小さな異変に気がついていた。
車体が微妙に蛇行し始めているのである。

運転席のバラシキをちらりと見た。

彼は相変わらず怒ったような顔をして、
後ろを向きながらハンドルを切っている。

フェリーはどんどん近づいてきた。

そして桟橋と船とを繋ぐ板に車体を乗せようとしたその瞬間、
悲しいかなタイヤは微妙に板から外れ、
車体は2本の板の間に挟まって動けなくなってしまったのである。

             

一瞬、沈黙があたりを支配した。

面目を失ったバラシキはすぐにギアを前進に入れ、
猛烈な勢いで板の間から脱出しようとしているが、
タイヤが虚しく音を立て空回りするばかりで、
一向に抜け出せる気配がない。

しょうがねえな・・・

男達は今度は今押してきた桟橋の方向に向けて、
全員でまたトヨタを押し戻し始めた。

             

数十分の格闘の後、
何とか元のあたりまで車を戻した我々は、
気を取り直して、再度フェリーに向けて後ろ向きに押す事にした。

何せこれを乗せないと出航できないのである。

「うりゃあ!」

「ヤマトダマシイ!」

「アッラー・アクバル!」

トヨタは前回と同じように徐々に加速していった。
更に予想外のやり直しで皆ヤケになっているせいか、
スピードも若干アップしているようである。

しかし私はある悲しい事実にすぐに気が付いた。

車がまた蛇行し始めていたのである。

<つづく>
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ニジェールの渡し -5- 挫折 

桟橋は再び沈黙に包まれていた。

そして皆の視線は、またしても乗船に失敗し、
板の間にはさまって動けなくなってしまった我々のトヨタに注がれていた。

運転席の中にはバラシキがいた。
彼は、何に向かってかは不明であるが、
かなり怒っている様子であった。
(バラシキはいい奴だが気が短い)

彼の自慢は、

「俺はアフリカ中で大型コンボイを転がしていたんだぜ、ふっふっふ」

である。

そういえば、

「こんな小さい車(大型の四駆なのだが)運転したも事ねえよ、ふっふっふ」

とも言っていた。

そんな彼にとって、
たかがニジェール河を渡るフェリーに車を乗せるのを、
それも衆目の中、立て続けに二度も失敗してしまうなどとは、
屈辱以外の何物でもなかったであろう。

             

押すのを手伝っていた一人のドライバーがたまらず運転席に走って行き、

「お前、いいかげんにしろ、運転できんのかよ!」

何語かでそのような事をわめき散らした。

「おう、やるのか」

少し血走った眼をしたバラシキが車から降りようとしている。
(バラシキはケンカが強そうである)

騒ぎは収拾がつかなくなってきていた。

何とかしなくては・・・

             

この重いトヨタの四駆を二度も押すはめになった私であったが、
その時点で事の原因を確信していた。

それは、

「バラシキは車を後ろ向きに運転したことがないのであろう」

という事である。

まあ、よく考えてみると、
この広いアフリカ大陸を走る大型トラックが、
バックする必要に迫られる事などは滅多にないのであろう。

だから大型の車には通常バックのギアが付いていないか、
もしくは必要ないので故障しても直さない、
もしくはギアを外して他に転用しているに違いない。

             

とはいってもこの場を収拾しなくてはならない。
バラシキに何となく気に入られている私は、
何か責任感のようなものを感じ始めていた。

どうしたものか・・・

私は、遠く黄金伝説の地トゥンブクトゥに続いているであろう
ニジェールの青い水面を見ながら、
ただ茫然としていたのである。

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ニジェールの渡し -6- 総決起 

桟橋での騒ぎは、益々大きくなってきていた。
他の乗客には完全に迷惑をかけ始めている。

この場をやり過ごしバラシキの怒りを沈め、
次のフェリーを待つという選択もあった。
しかし我々は、その日の午後にはトゥンブクトゥから更にラクダに乗って、
サハラ砂漠の奥地へ向かうことになっていた。

私とガイドのソリはとにかく運転席に走って行った。
そしてまさにケンカを始めようとしている二人を何とかなだめ、
周囲の皆にもう一度だけチャレンジさせてもらうようお願いした。

             

問題はバラシキの運転である。

「ちょっと交代しようか」

などとは絶対に言えない。

「アフリカ大陸版トラック野郎」の彼にそのような事を言った途端、
彼はバマコへ帰って行ってしまうであろう。
(実際それ以前に「俺は帰る」という騒ぎが一度あった)

通常、車をバックで運転する場合、
後ろを振り返った状態で、
自分の右方向に進みたい場合はハンドルを左に、
左方向に進みたい場合はハンドルを右にきる必要がある。

日本などで車を運転する我々には当然の事なのであるが、
何せ運転を始めてこのかた車をバックさせる必要のなかったバラシキにとっては、
それは未知の世界なのである。

その結果、少し車を右に修正すべき時には更に右に向かうし、
その反対の場合は左におおきくぶれる。
ハンドルさばきが全く反対なのである。

バラシキの見ていない所で我々は密かに打ち合わせをした。
そしてこの最後のチャンスに乗船を成功させるには、
できるだけ助走の距離を縮めて、車の方向が変わってしまう前に、
一気に車を押し上げる必要があるという結論に達した。

ただし助走が短いだけに、今まで以上に人手が必要になる。

我々は、そこら中の車を押せそうなありとあらゆる人に声をかけた。

             

そして皆さん、ついに「その時」はやってきたのであります。

時は2004年12月中旬のけだるい昼下がり、
場所はニジェール河中流のとあるフェリー乗り場の桟橋。

総勢約20名に膨れ上がった多国籍の寄せ集め、ではなくて精鋭達は、
フェリーに乗る全乗客の運命を背に、
それぞれの神に心で祈りながら、
自走でバックすることのできないという悲運のトヨタを、
一気に押し始めたのであります。

そしてそれは、
不条理な現実に対する民衆の総決起とも言える、
更には、西アフリカのフェリーにまつわるその後の歴史をも変えてしまうような、
革命的な出来事でもあったのです。


             

数十分の後。

私は黄金伝説の地・トゥンブクトゥへと向かうフェリーのデッキで、
ニジェールの川面を伝って吹きよせる心地よい風を頬に受けていた。

ふと隣を見ると、
いかつい顔にはいささか不釣合いな、
ちょっとカールした可愛い睫毛を漆黒の横顔に見せながら、
バラシキが満足そうにタバコをふかしていた。

「青きトゥアレグ」へ つづく>

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